「じゃ」が基本の岡山弁
「じいさん臭い方言だなぁ・・・」
私移住ガイドが、初めて岡山を出て名古屋で学生生活を始めた頃の話。
同県の出身者で盛り上がっていたら、他県の人からポツリと言われて、ショックでした。「これが普通じゃろう」は、普通じゃなかった!
それまで意識していなかったけれど、言われてみれば日本昔話に出てくるおじいさんの喋り方が一番しっくりきます。
「そうじゃ、ええんじゃ、おえんのじゃ」 など
語尾に「じゃ」がつくのが、じいさん臭い理由でしょうか?
岡山弁を子どもや女子がしゃべると「かわいい」という少数派意見もあるようですが、皆さんはどう思われますか?
とあるスーパーで、子どもが駄々をこねていた時のこと。
- 母:「わがまま言うんじゃったら、ほっといて帰るでー」
- (わがままを言うなら、ほっておいて帰るよ)
- 子:「これが、いるんじゃ!」
- (これが、欲しい)
- 母:「いらん、いらん」
- (いらない、いらない)
- 子:「いる言うたら、いるんじゃ!」(泣き顔)
- (欲しいって言ったら、欲しいの!)
かわいいというよりも「子鬼みたいだなぁ」と思ったものです。
移住ガイド宅の近所には「うん、うん、そうそう」という相づちを「じゃ、じゃ、じゃ」と連呼する奥さんがいます。
「私もそう思う」は、「じゃ」 の一言で済むのです。
例えば、
- 「まぁ、そうかなぁ」という承認なら「じゃ」 (1回)
- 「本当に、そうだよね」という同意なら「じゃ、じゃ」 (2回)
- 「絶対に、そうだよね」という確信なら「じゃ、じゃ、じゃ」 (3回)
感情表現のレベルによって「じゃ」の数が増えるので、とても分かりやすいのです。
今までに聞いた最高は3回で、4回だと
「じゃ、じゃ、じゃ、じゃーん」というふうに、交響曲第5番『運命』みたいになってしまうのでしょうか。。。
相手に同意を求める「じゃろう?」
「あなたもそう思うでしょう?」(don't you?)と相手に同意を求める時、岡山では「じゃろう?」 がよく使われます。
「じゃ」と同様に要求のレベルや感情によって回数が増えるのが特徴です。
- 「あの子、面白いよなぁ? じゃろ?」 (1回)
- 「あの子、カッコええよなぁ。じゃろ?じゃろ?」 (2回)
- 「あの子、私を無視しとるよなぁ。じゃろ?じゃろ?じゃろ?」 (3回)
「じゃろ?じゃろ?じゃろ?」 と3連打をかまされたら、こちらも「じゃ、じゃ、じゃ」 の3連弾で
応じるのが正しいマナーでしょうか?
男性の場合は「のう?」「のうや?」 を使って同意を求めるケースもあります。
例)おめーも、一緒じゃろう。のう?(あなたも同じでしょう。そうでしょう?)
You will be the same. don't you?
日本広告審査機構の「JAROに聞いたらどうじゃろ?」というキャッチフレーズのCMは、岡山県限定かと思っていたら、全国で放送されているようです。
「じゃろう」は、岡山弁の中でも抵抗が少ないかもしれません。
「じゃろう」 のほかに「じゃがー?」 (◯◯でしょう?)もよく使われます。
例)あれはヒョウじゃーねーど。ジャガーじゃがー。
(あれはヒョウではないぞ、ジャガーでしょう?)
語尾を伸ばして、フレンドリーに話そう。
岡山弁には語尾を伸ばす言葉が圧倒的に多いです。
- あけー(赤い)
- あえー(青い)
- あちー(暑い)
- さみー(寒い)
- あめー(甘い)
- すいー(酸っぱい)
etc
「ケチ!」でさえ、「ケチー」 になってしまうのです。
会話の中だと
おめー、何しょんなー。(君は何しているの?)What are you doing?
はよー、学校行こうやー。(早く学校へ行こうよ)Let's go to school together.
移住されて来る人には放牧的で呑気に聞こえるかもしれませんね。語尾を伸ばすことで相手との緊張感がほぐれてフレンドリーに感じなくもありません。
「もんげー」は使うな!
岡山弁の「すごい」の三段活用といえば、「ぼっけー、でーれー、もんげー」 ですが、やはりこれらも語尾が伸びています。
「ぼっけー」「でーれー」は、よく耳にするものの、「もんげー」が日常会話で使われているのを今まで耳にしたことがありません。
というか「妖怪ウォッチ」で注目されたり、岡山県のキャッチフレーズに採用されるまで、移住ガイドはそんな言葉があることすら知りませんでした。
もしも岡山県の小学校へ転校してきた子が、方言になじんだところを見せようと自己紹介で次のように言ってしまったら、どうなるでしょう?
「岡山は晴れの国というだけあって、もんげー 空が青いです!」
クラスの皆に大笑いされた挙句に「モゲオ!」とか「モンゲ」「コマさん」とかいうあだ名がつかないか心配です。。。
※「コマい」は岡山弁で「小さい」「ちっこい」の意味
ちょっとキツく聞こえる岡山弁。(命令形)
岡山県外の方がはじめて聞いたら「ドキッ」とする、きつい感じの岡山弁を紹介します。
まずは、老若男女が普通に使っている「はよー、しねー」 です。
これは、「早く死ね」ではなく、人を急かせる時に使う言葉で、「ちょっと急いで」(Please hurry!)の意味で使われます。
また、「しねー」の代わりに備前地区では「せられー」 、美作地区では「しんちゃい」 を使うことが多いようです。
そのほか命令形の岡山弁には次のようなものがあります。
- きねー(来ねー) = おいで(come on)
- けー = おいで(come on)
- みねー(見ねー) = 見なさい(Look)
- やれー = やりなさい(do it)
- せー = しなさい(do it)
- どけー = どけろ(Get out)
- いねー = 帰れ(go home)
- おきー = 起きろ(get up)
否定形の岡山弁
岡山弁の否定形は語尾が「ん」で終わる単語が多く、ぶっきらぼうな感じにも聞こえます。
- いらん = いらない(do not need)
- おえん = だめ(NO)
- おらん = いない(absence)
- ねー = ない(nothing)
- いけん = ダメ(No good)
数量の岡山弁
数量に関する方言は、日常生活で使うことも多いのでよく覚えておきましょう。
- ちいと(少し) ←→ ぎょうさん(たくさん)
- たけー(高い) ←→ ひきー(低い)
- たけー(値段が高い)←→ やしー(安い)
- あせー(浅い) ←→ ふけー(深い)
- おおけー(大きい) ←→ こめー(小さい)
- なげー(長い) ←→ みじけー(短い)
- ひれー(広い) ←→ せめー(狭い)
- ふてー(太い) ←→ ほせー(細い)
- つえー(強い) ←→ よえー(弱い)
- おもてー(重い) ←→ かりー(軽い)
- うしー(薄い) ←→ あちー(厚い)
感覚の岡山弁
自分がどのように感じているのかという感覚の表現も日常会話で多用されます。
- あちー(熱い)
- ぬりー(ぬるい)
- つめてー(冷たい)
- さみー(寒い)
- あめー(甘い)
- かれー(辛い)
- すいー(酸っぱい)
- えれー(しんどい)
- かいー(かゆい)
- いてー(痛い)
- かてー(固い)
- やえー(柔らかい)
意味が分かりにくい岡山弁
移住者が聞いたこともないような珍しい岡山弁には、次のようなものがあります。
誰(Who)を意味する「でー」 は、かなり使用頻度が高いです。
- 「おめー、でーなー?」(あなたは、誰ですか?) Who are you?
- 「でーが来たん?」(誰が来たの? )Who came?
- 「でーとでーが、行ったん?」(誰と誰が行きましたか?) Who went?
そのほか「誰か」のことは「でーか」
例)「でーか、一緒に店へ行こうやー」(誰か私と店へ行きましょう) Let's go with someone to a store.
「帰る」という意味の「いぬる」
例)「ぼちぼち、いぬるか?」(そろそろ帰ろうか?) Shall we go home soon?
ちなみに広島県や三重県でも、同様に帰る、去ることを「いぬる」というそうです。
「すごく」という意味の「えろー」
例)「えろー、かわいいな」(すごく、かわいいね) Really cute!
くれぐれも、エロカワイイという意味ではないので、勘違いしないように。
「ふざける」という意味の「ちばける」
先生から「ちばけるな!」と怒られたら、「ふざけないてないで真面目にしろ」という意味です。
「なくなる・空になる」という意味の「みてる」
例)「ガソリンがみてたけー、給油せにゃーいけん」 ガソリンが空なので、給油しなければならない。
最後に誹謗中傷・非難の言葉を紹介します。
- あんごう(バカ)
- おおあんごう(大バカ)
- ぶせーく(ブサイク)
- ほうける(とぼける)
- やっちもねー(つまらない)
- わやくそじゃ(むちゃくちゃだ)
岡山弁ガイド、いかがでしたか?移住してからは「結構大変そう」と思われたのではないでしょうか?
岡山弁は個性が強いですが「習うより慣れろ」で、移住後にリスニングの方はすぐに慣れると思います。でも、トーキングの方は、岡山県で長年暮らしているのに全く岡山弁に染まらない人もいるようです。
一方で子どたちは、親が驚くほど早く岡山弁を話し始めるかもしれませんね。
岡山弁の理解度、試してみる?
えーかげんな 岡山弁テスト(全5問)