田舎暮らしに憧れて岡山県への移住を考える人にとって、公共交通機関の有無は大きな問題です。
特にお子さまや高齢者との移住を計画しているなら、この問題を軽視することはできません。
多くの県民にとって車は「足」であり、都市部を離れれば成人1人につき1台の車を所有しているのが普通です。
けれども、車を持たない子どもや高齢者らは主に公共交通機関を利用しており、鉄道線から離れた地域では路線バスが唯一とも言える移動手段になっています。
先日、その路線バスの多くが廃止になるかもしれないというニュースが報道され、県民に波紋が広がっています。
2018年2月、岡山県で交通運輸事業を展開する両備グループが、78のバス路線のうち赤字になっている31路線の廃止届を国土交通省中国運輸局に提出しました。
きっかけは、両備グループが長年にわたり営業してきた岡山駅前と市内東部を結ぶ岡山西大寺線に、格安運賃で攻勢をかける他社の参入が承認されたことでした。
「黒字路線の利益が減ると赤字路線の維持は困難になる」というのが、両備グループの主張です。
この発表を受けて、私たちは衝撃を受けました。
「4割も岡山のバス路線が減ってしもうたら、バスを足にしょーる人らは、どげんなるんじゃ?」
その後、県や市町村による法定協議会が行われることになり、この廃止届は撤回されました。
しかし、今後も赤字路線のバスの運行が保証されたわけではありません。赤字のバス路線から徐々に撤退していくこともありえます。
路線バスがなくなると最初に困るのは、子どもとお年寄りです。
子どもの場合
岡山県内の過疎地では少子化の進行で小中学校の統廃合が進んでします。
遠方へ通学しなければならないのに、通学の足であるバスが無くなってしまったら、どうすればいいのでしょうか? そうなると両親または祖父母が学校へ送迎しなければなりません。
仮に母親が送迎するとなると、フルタイムでの仕事ができないのはもちろん、パートタイムでもシフトのやりくりに困るでしょう。
また、子どもが2人、3人といる家庭では小学校、中学校、高校などでそれぞれ帰宅時間が違うので、車の送迎が大きな負担になるのは明らかです。
車には税金、保険、車検代、ガソリン代などの維持費がかかりますので、経済的にも負担が増します。
通学が困難という理由で子どもに進学先の変更を強いて、その結果として夢を諦めてさせてしまうようでは、何のために移住をしたのかと後悔しそうです。
高齢者の場合
近年ではアクセルとブレーキの踏み間違いなど高齢者による交通事故が増えているため、運転免許自主返納が話題になっていますが、公共交通機関がない田舎ではそうもいきません。
過疎地では70代、80代になっても高齢者が車を運転するのが普通です。
自らハンドルを握らなければ、買い物をしたり病院へ通うこともできず、無理をしなければ生活ができないという事情があります。
しかし、この生活のための無理が、痛ましい事故を引き起こしてしまうことがあります。
2018年1月には岡山県赤磐市で、70歳の女性が運転する車が集団下校中の児童の列に突っ込んで死亡事故を引き起こしています。
岡山県警察のホームページの「高齢ドライバーの交通事故発生状況」によると
平成29年中、岡山県下で四輪車や二輪車等を運転中に亡くなられた方は47人で、そのうち17人(36.1%)が高齢者の方でした。
過疎地に住むひとり暮らしの高齢者が、視力、聴力、反射神経などの低下を実感して車の運転を諦める時、長年住み慣れた田舎での暮らしを諦めて、子どもの家に身を寄せたり、施設に入所したりすることも多いようです。
田舎へ移住してシニアライフを考えておられる方、または、子育て世代の方は特に、公共交通機関の有無をしっかりと見据えた上で移住計画を立てられることをお勧めします。
以下は今回の騒動で両備グループから廃止届提出された路線です。その後、廃止届は撤回されましたが、路線バスの永続が決まったわけではありません。
下記の両備グループのホームページより引用した廃止予定一覧の路線図では、近郊から岡山市や倉敷市の中心へ接続する路線の廃止予定が多いのに驚きました。
多くの人にとって唯一の公共交通機関である路線バスの存続を願います。
両備グループ 路線バスの廃止届提出について
両備バス
- 1 北まわり牛窓線 西大寺~邑久駅
- 2 南まわり牛窓線 西大寺~神崎~紺浦
- 3 宝伝線 西大寺~(久々井)~東宝伝
- 4 岡山駅旭川荘線 県庁前~中井
- 5 操南台団地線 護国神社前~操南台団地西
- 6 岡山渋川線(国道30号線)興陽高校前~西高崎
- 7 玉野市役所線(国道30号線)興陽高校前~西高崎
- 8 荘内渋川線(国道30号線)興陽高校前~西高崎
- 9 小串・鉾立線 郡団地口~鉾立
- 10 上山坂線 郡団地口~東児市民センター(シーバス)
- 11 王子ヶ岳線 渋川三丁目~王子ヶ岳登山口
- 12 企業団地・秀天橋線 宇野駅~玉四丁目の旧道区間 給食センター~玉原ニュータウン 北長尾~永井上~長尾馬継 秀天橋~玉野光南高校
- 13 光南高校線 宇野駅~玉四丁目の旧道区間 給食センター~玉原ニュータウン 北長尾~永井上~長尾馬継 秀天橋~玉野光南高校
- 14 岡倉線(旧2号線)下撫川~清心学園口 松島西ノ口~倉敷駅
- 15 JFE本線 江長十字路~JFE南門前
- 16 倉敷吉岡線 葦高小学校東~連島
- 17 玉島中央町線 爪崎南~玉島中央町
- 18 住友東線
岡電バス
- 1 三野線 法界院駅前~三野
- 2 中央病院線 津島新道~中央病院経由~岡山商大前
- 3 神道山線 ききょう町~神道山
- 4 下撫川~花尻入口線 鉄工センター~バラ園~花尻入口
- 5 西小学校線 野田東~大元上町~西小学校前
- 6 平田・北長瀬線 ポリテクセンター入口~北長瀬駅前
- 7 京山線 岡山駅~京山
- 8 ポリテクセンター臨時便 岡山駅~野田東~北長瀬駅前(臨時便)
- 9 新保・万倍線 新保北~西市団地~泉田北
- 10 中庄線 鉄工センター~清心学園~中庄駅
- 11 汗入・火の見・重井病院線 西古松~汗入/火の見/重井附属病院
- 12 コンベックス岡山線 赤松~コンベックス岡山前
- 13 岡大附属校線 網浜~岡大附属校前
引用:両備ホールディングス株式会社 ホームページより「両備グループ 路線バスの廃止届提出について」
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岡山市、バス6方面再編案を提示 重複路線統合や支線導入:山陽新聞デジタル|さんデジ https://t.co/7UdsIGQYMB
— 岡山移住ガイド.jp (@IJU_Guide) August 20, 2019
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