それでは、早速、隠密見学させていただきまーす。
とっとり・おかやま新橋館 1F
「なぜに、鳥取・岡山なのじゃ?」
これが最初に浮かんだ拙者の疑問であった。
表口の看板には、わが岡山県の名産物の「桃」と隣県鳥取の名産物の「梨」をもじって「ももてなし」とある。
桃と梨では収穫時期が競合しておらず、旬のものが提供できそうじゃが、どうも両県のコラボはピンとこんなぁ。
店内はそれぞれの独自性を出せるように、岡山コーナー、鳥取コーナーに分かれているものと思っていたが、予想に反して一つのスペースで、両県の商品を販売していた。
1階には、野菜、果物、加工食品、お菓子、工芸品などが並べられており、最近できたばかりの「道の駅」の雰囲気に近い。
生鮮食品のコーナーでミニトマトを手にしてみる。
1パック、140円か、なかなかお手頃...いや違う、440円じゃ。
「ぼっけー、するのー!!」
※とてもお高いという意味の岡山弁。
なにゆえ、我ら地元庶民が口にしたこともないような高価なトマトがここで売られておるのじゃろう?
場所代、人件費、輸送費などコストがかかることは拙者にも分かる。しかし、これから移住を考えている人にとって、いったいどんな利点があるのじゃろうか?
否、ここは移住者のためだけの施設にあらず。
きっと拙者のような下々の者には知りようもない目的があるに違いない。
お上のすることに間違いはなかろう...
ちなみに、翌日に拙者が岡山の産直市で求めた野菜の値段を紹介しておこう。
岡山市内で購入の野菜
- ミニトマト 1パック 75円(150円の半額割引)
- 新たまねぎ 1袋(7個入) 100円
- ピーマン 1袋 100円
- こまつな 1袋 80円
- さぬさや(豆) 1袋 50円(100円の半額割引)
地産地消といえば、ここ「とっとり・おかやま新橋館」の店内では、拙者がこよなく愛する「地産地消おかやまの唄」が流れていないではないか?
「地産 地消 地産 地消 岡山〜HEY!」
そうか、あれだけのインパクトを持つ曲を流せば、店内は岡山県一色!鳥取県の方々に遠慮しておるのじゃな。
ふむふむ。
それにしても、商品陳列のポップも、桃色、緑色、桃色、緑色と岡山と鳥取が見事に交互に並べられ、実に仲睦まじいことよのう。。。
「なーらんだ、なーらんだ、桃、白、緑〜♪」と 心がほっこりするようじゃ。
店内の奥へ進むと、あそこに見えるは「ソフトクリーム販売コーナー!」
近づいてみると
右に「蒜山 ジャージーソフトクリーム 380円」
左に「大山 白バラソフトクリーム 380円」
のポスターが、これまた仲良く並んでいた。
まるで「あなたは、どっち?」と微笑みかけているようじゃ。
しかし、それを見た途端、拙者の中で何かが弾けた。
「鳥取には、負けたくねぇー!」
不覚にも隠密の身でありながら、岡山弁丸出しで店員に聞いてしまった。
「ど、どっちのソフトクリームが人気なん?」
店員が無言で指さしたポスターは、「蒜山 ジャージーソフトクリーム」。
そのとき、青空のもと広大な牧草地で草をはむジャージー牛たちの横を、蒜山高原の風が爽快に吹き抜けた。
「ラブリー!!」
「蒜山 ジャージーソフトクリームですか?」と目で聞く店員に「また今度にします」と告げるなり、そそくさとその場を立ち去った。
とっとり・おかやま新橋館 2F
そして、いよいよ「とっとり・おかやま新橋館」の本丸である2階移住コーナーへと向かった。
階段を上がり、まず目に入ったのが相談カウンターの上に設置された特大モニターだった。そこには岡山出身のタレント「桜井日奈子」さんが、鬼かわいいうらじゃを踊る映像が繰り返し流されていた。
カウンターから離れた場所に、県内各市町村の移住や観光のパンフレットが置いてあったので、それを手に取りながら相談カウンターの様子をうかがってみる。
カウンターでは男女3人が何やら打ち合わせをしているようじゃ。
驚いたことに拙者に気づいた様子がまるでない。。。
普通ならば、「いらっしゃいませ。何かお知りになりたいことがございましたら...」と声をかけてくるはずだが、このような接客態度で本当に良いものか?
パンフレットは自由に持ち帰りができるようで、わざわざ移住相談会に行かなくても、ここで手に入りそうだ。
5分ほど経ったが、相変わらずカウンターの3人はこちらに全く関心がない。
もしや、先ほどのソフトクリーム店でのやりとりを聞かれ、拙者が岡山県人だと見切られたか?
否、監視映像でも見ていない限り、そのようなことは絶対にあるまい。
もう少し、間を詰めてみるか。
拙者はカウンターの前を横切り、すぐ横の資料コーナーへ移動しつつ、密かにスタッフを観察した。
だが、目線は動かず、会話にまるで揺らぎがない。
まるで、拙者が存在していないような振る舞いじゃ。
「こ、これは、いったい?」
もしや、最初から気づいていながら、お客様がリラックスできるよう気づかぬフリを装っておるのか?
移住といえば人生の一大決心。軽々しく声をかけるような接客はしないということか?
しかし、ホテルでおもてなしの修行を積んだ拙者に、まるで気配を感じさせずに接客ができる者がここにおるはずが...。
いやまて、ここは東京にあって岡山を結ぶ拠点地、移住施策の要じゃ。腕のたつものを置いても不思議はないか?
はっ。もしやこれが、おもてなしを超越した異次元のサーヴィス、
「ももてなし」なのか?
否、今宵はよしておこう。 ...カチャリ。
この場所で人々が結んだ岡山との縁がすぐには解けぬよう、何かできることがありそうじゃなぁ。
しばらく東京の夜風にあたって帰るとするか、晴れの国へ。
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